リクエスト
岩手県滝沢市にて注文住宅の設計・施工を行う株式会社ゆい工房様から、ブランディングに関わるご相談をいただきました。
ゆい工房様は、無垢材や漆喰などの自然素材を使った家づくりを長年にわたって続けてこられた、盛岡地域を代表する地域工務店のひとつです。
自然素材を用いた家づくりは、現在では決して目新しいものではありません。しかし、県産材を積極的に使い、自然と人にやさしい家づくりを進めてきたゆい工房様の長年の歩みは、岩手県内における自然素材の家づくりの認知を広げる大きな役割を果たしてきたように感じています。
その一方で、注文住宅を取り巻く状況は大きく変化しています。家づくりの価値観やスタイルは多様化し、情報発信の方法も、折り込みチラシ、Webサイト、SNS広告、動画など多岐にわたるようになりました。そうしたなかで、ゆい工房様は新規顧客との接点づくりに課題感をお持ちでした。
弊社へのご相談は、新築物件の見学会告知に関する情報発信から始まりました。しかし、お打ち合わせを重ねるなかで、単発の告知だけではなく、ゆい工房様の魅力をどのように伝え、どのような方と出会っていくのかという、ブランディング全体を改めて見直す方向へと広がっていきました。
クリエイティブの視点
最初に取り組んだ制作は、新築物件の見学会をお知らせするフライヤーでした。
ゆい工房様では、これまで盛岡市を中心に折り込みチラシによる情報発信を行い、一定の成果を生み出してこられました。そこでまずはフライヤーのデザインを一新し、新たな印象をつくることで、新規顧客との接点を広げることを目指しました。
次に、フライヤーによる情報発信にSNS広告の運用を組み合わせ、より広いターゲットへ情報を届ける仕組みを整えました。SNS広告では配信状況をリアルタイムで確認しながら反応の傾向を把握し、ターゲット設定の調整も精密に行いました。
SNS広告の大きな特長は、広告の反応を統計として把握しながら運用できることにあります。これは紙媒体にはない大きなメリットです。一方で、紙媒体には紙ならではの手触りや記憶への残り方があります。単純に顧客獲得率だけで優劣を判断するのではなく、それぞれの媒体の役割を見極めながら組み合わせていくことが重要だと思います。
新築見学会のPRを進める中で、新たに企画したのが、新規のお客様やOBの方々を対象としたファンイベントです。
ゆい工房様は以前から、クラフト、音楽、アートなど、暮らしに彩りをもたらす情報を発信してこられました。その流れを汲み、家づくりと暮らしの楽しさをゆい工房様らしく伝えるために企画したのが、「森のヒュッテ」です。
「森のヒュッテ」は、山小屋で仲間たちが楽しく語り合う時間をイメージしたイベントです。会場には、ゆい工房様の展示場である「ゆいの家」を設定しました。
「ゆいの家」は築20年を迎え、自然素材を使った家が時を経てどのように美しく育っていくのかを体感できる展示場です。この場所をイベント会場として活用することで、ゆい工房様の家づくりの世界観を、言葉だけではなく空間から感じていただくことも狙いのひとつでした。
イベントの内容としては、第一部に、ゆい工房様の設計コンセプトである「広がり間取り」について、一級建築士である鹿野様がわかりやすく解説する設計のお話を企画しました。第二部では、薪ストーブの使い方や、料理家を招いてのホームパーティーの楽しみ方など、暮らしをゆったりと楽しむためのコンテンツを組み立てました。
家を建てることだけを直接的に伝えるのではなく、その先にある暮らしの時間や、人が集まる楽しさを伝えること。それが「森のヒュッテ」の大切な役割にあることをクライアント様と共有できたことがイベントの実現に繋がったと感じています。
月1回の開催を目標として企画した「森のヒュッテ」のPRでは、SNS広告を展開し、新たに制作したLPへ誘導する導線を設計しました。
このLPでは、「森のヒュッテ」というイベントの魅力を伝えると同時に、ゆい工房様の世界観と共鳴する潜在的なお客様とのエンゲージメントを生み出し、深めることを意識しています。また、SNS広告では動画広告やフィード広告など、複数の表現方法を試しながら、それぞれの訴求力をデータとして把握し、今後のPR戦略に活かすための情報収集も進めています。
こうした一連のブランディングには、当然ながら明確な終わりはありません。その後もゆい工房様と議論を重ねながら、LPの再編集や折り込みチラシ運用の可能性の再確認など、情報伝達のトレンドを読み取りつつ、試行錯誤を続けています。
そのなかで、現在私たちとゆい工房様が改めて重要視しているのが、紙媒体の活用です。
インターネットが情報伝達の中心となる状況が一般化すればするほど、紙という物質の存在感や、記憶に残る力はむしろ増していくように感じています。特に注文住宅のように、長期にわたって多くの情報収集と検討を必要とする分野では、紙媒体は欠かすことのできない情報伝達ツールになり得ると考えています。
そうした視点に基づき、紙質にこだわったポートフォリオやフォトカードなど、顧客との対面でのエンゲージメントを深めるための制作物もご提供しています。
ゆい工房様とは、現在も継続して議論を重ねながら、さまざまな視点からブランディングのお手伝いをさせていただいています。
クライアント様の魅力をどのように伝えていくかという命題に、簡単な答えはありません。しかし、根気強く伴走させていただくことで、少しずつ良い結果が生まれ始めていることを実感しています。
今後も引き続き、クリアな視点と深い洞察を持ちながら、ゆい工房様の家づくりと、その先にある豊かな暮らしを伝えるクリエイティブワークを深めていきたいと考えています。