リクエスト
かわい元気社様が宮古市川井地区で運営されている「タイマグラキャンプ場」と「横沢温泉 静峰苑」の施設利用パンフレットのリニューアルをご依頼いただきました。
既存パンフレットの在庫切れのタイミングでのご相談がはじまりでしたが、ヒアリングを重ねる中で、近年利用客が増加しているキャンプ場と、入浴・宿泊施設である静峰苑を軸とした、大規模なリニューアル企画へと発展しました。
両施設ともリピーターや近隣住民の方々には深く愛されているものの、盛岡市内から約70kmも距離があり、新規利用客の獲得が大きな課題となっていました。また、従来のパンフレットは10年以上前に制作されたA4サイズ・8ページの仕様であり、デザインの新鮮さが薄れてきたことや情報の古さに加え、観光施設等で気軽に手に取りにくい形状であることが障壁となっていました。クライアント様からは、新規利用客の増加を目的として、キャッチーな内容で持ち運びやすく、認知拡大から実際の来訪へとつながる新しいパンフレットの創出を求められました。
クリエイティブの視点
企画にあたり、私たちは両施設が位置する「タイマグラ」という土地の圧倒的なロケーションを見つめ直しました。この地域は、日本で一番電気が通るのが遅かった場所として有名です。コンビニはおろか街灯すら少ない深い森の奥に、両施設はまさにポツンと佇んでいます。一見すると不便にしか思えないこの「圧倒的な非日常感」こそが、現代の旅行者が求める何にも代えがたい価値になると捉えました。
周囲に目を向ければ、北上山地最高峰の早池峰山がそびえ、閉伊川や薬師川といった美しい清流が山間を縫って流れています。この自然の美しさこそが、「圧倒的な非日常感」を作り出しています。私たちが実際に現地へ入り、取材や撮影を行った際にも、シカやキツネ、テンといった野生動物たちに遭遇し、まさに山奥の冒険をしているかのような高揚感を肌で感じました。
そこで今回の制作では、単なる施設案内にとどまらず、この唯一無二のロケーションを「体験」として伝えるデザインを目指しました。
まず、従来の形状からA3変形サイズの観音開きへと仕様を一新しました。折りたたまれたページを左右に開くことでタイマグラの深い自然へと誘われ、徐々に情報が明かされていくような、ストーリー性のある構成に仕上げています。また、ラックに置かれた際の手に取りやすさと、ポケットに入れて持ち運びたくなるコンパクトさも両立させています。
ビジュアル表現においては、早朝から日暮れまでロケを行いました。ドローンによる空撮で早池峰山から川井地区を見下ろすダイナミックな構図を押さえたほか、朝露に濡れる艶やかな木々の表情や、夕闇に包まれるしっとりとした山並みの様子など、時間とともに移り変わる自然の姿を写真に収めています。これまで見たことがないようなこの土地の美しい表情を切り取ることで、視覚的な引きの強さを生み出しました。
さらに、施設周辺での過ごし方をリアルにイメージしてもらうため、温かみのある手書き風のイラストを用いた「早池峰山麓アクティビティMAP」を制作しました。渓流釣りや登山、E-BIKEのレンタル、ピザ焼き・薪割り体験といった実際の利用イメージをマップ上に配置し、自然や野生動物、人間が共存する土地の姿を直感的に理解できるよう設計しています。
このパンフレットは岩手県内の観光案内所や道の駅などで幅広く配布されるため、各地からのアクセス方法も分かりやすく表現しました。少しアクセスしにくい場所であっても、ルートや所要時間を丁寧に可視化することで、訪問へのハードルを下げる工夫を施しています。
納品後、クライアント様からは「多くの方に手に取っていただけるようになり、新規利用客の増加に手応えを感じている」との嬉しいご報告をいただきました。また、地域の方々からも「長年住んできて見慣れたはずの景色が、これほど美しく表現されていて感動した」と、大変好評をいただいているようです。情報がネットに偏りがちな時代ではありますが、こうした紙媒体にはまだまだ大きな役割があるのではないかと改めて感じることができた貴重な機会だったと思っています。