リクエスト
宮古市商工労働観光部観光課様による観光PRポスターのコンペティションに参加させていただきました。
宮古市様からのリクエストには、デザイン制作上のいくつかの条件がありましたが、基本的には「宮古市の魅力を広く伝える」という大きなテーマのもと、比較的自由度の高い内容でした。
一方で、制作スケジュールの面では新規撮影を行うための十分な準備期間がありませんでした。そこで今回は、地元企業である弊社がこれまで蓄積してきた宮古の情報や写真素材を活用しながら、企画構成・デザインを進めていくことになりました。
クリエイティブの視点
かつて観光PRポスターといえば、写真による視覚表現が中心でした。しかし現在では、あえて写真を用いず、イラストやタイポグラフィーを中心に展開するものなど、その表現は多様化しています。デザインが時代感を映すものだとすれば、まさに百花繚乱の状況と言えるかもしれません。
そうした中で今回のポスター制作にあたり、弊社が選択したのは、改めて写真の強さを軸にしたグラフィックデザインでした。
弊社では、長く写真表現をクリエイティブの大きな柱としてきました。その理由はいくつかありますが、写真の中には、私たちが大切にしているものが詰まっているように信じているからなのかもしれません。
それはひとことで言えば、「この土地で生きている」という感覚です。
弊社は100年にわたり、この宮古という小さな海の町で印刷業を営んできました。めぐる時代の中で、宮古という土地を見続けてきました。私たちにとっての「写真」とは、その眼差しのリアリティを伝えるための大切な道具なのです。
写真には、記録としての力があります。同時に、記憶を呼び起こす力や感情に深く訴えかける力もあります。そして、そうした写真はその土地、つまり現場に立つことなしには生み出すことができません。
宮古という土地で私たちが何を見て、何を感じ、何を伝えたいのか。そのことを考えたとき、写真というメディアは、最も誠実な表現のひとつであるように思えるのです。
今回も、宮古市の魅力を伝えるために私たちが手を伸ばしたのは、これまで撮影してきた宮古の写真群でした。三陸の海と北上山地の山々に抱かれた宮古の絶景を丁寧に選び抜き、一枚のポスターの中に慎重に配置していきました。
それは、海と森が響き合い、海風と木々が呼応する、そんなイメージが広がる時間でもあったと同時に、風景のピースをひとつずつ並べながら、宮古という美しい風土を一枚の紙の上に立ち上げていくような不思議な創作体験でもありました。
結果として、コンペティションでは幸運にも受注に至ることができましたが、今回の制作は、改めて宮古という土地の魅力を見つめ直す貴重な機会にもなりました。
この一枚のポスターが、宮古をまだ訪れたことのない方にとって旅のきっかけとなり、すでに宮古を知る方にとっては、この土地の記憶を呼び起こすものになることを願っています。
※今回のコンペティションでは2案提出し、「森と海の絶景」に加え「美味の絶景」を制作いたしました。