リクエスト
岩手県田野畑村で漁業を営む「漁師魚武 中村」様より、地元の海が育む「塩蔵わかめ」「カットわかめ」「茎わかめ」のパッケージ制作をご依頼いただきました。主な販売先は地元の道の駅や自社ECサイト、ふるさと納税などが想定されています。
北三陸エリアはわかめの産地であり、数多くの商品が市場に出回っています。そのため、他事業者との差別化を図り、中村様が目指す高級路線のブランド価値をどのように制作物に落とし込んでいくかが課題でした。
また、中村様ご自身が現役の漁師であることから、多忙な漁業の合間に行う袋詰め作業の効率化も切実な要望でした。中村様が取り扱う既存の商品は包装袋にシールを1枚ずつ手作業で貼り付ける仕様でしたが作業効率が悪く、この部分での改善も求められていました。
クリエイティブの視点
今回の制作にあたり、私たちは「商品の高級化」と「作業効率の向上」という2つの課題を同時に解決するパッケージ仕様を設計しました。
まず、これまでのシールを貼り付ける仕様から、袋の上部を挟み込む「二つ折り」の化粧札へと変更しました。二つ折りの化粧札で袋を挟み、留め具で固定する仕様にしたことで、梱包作業の効率が向上しました。
さらにこの形状変更は、情報量の拡充というメリットをもたらしました。片面のみだったシールに比べ、化粧札にすることで4面の掲載スペースを確保できます。
このスペースを活かし、産地のストーリーを伝えるコンテンツを盛り込みました。パッケージの表面では「海のアルプス」とも称される田野畑の厳しくも美しい自然環境を紹介しています。この荒海で育まれたわかめが、天然の芽株を採取して自然のままに育てる「純自然」のものであること、そして香り高く肉厚でシャキシャキとした歯応えを持つという、田野畑村の魅力や中村様の品質へのこだわりを言語化することで、ブランドとしての価値を明確にしています。
また、産地としての厚みや奥行きを伝えるため、わかめだけでなく魚武中村様が水揚げするアワビやウニ、タコ、毛ガニ、さらには秋の松茸も含めた、田野畑が誇る「三陸山海の幸」をイラストとともに掲載しました。裏面には自社ECサイトへの導線もスマートに配置し、一つのパッケージが商品説明を超えて、「漁師魚武」ブランドの入り口として機能するよう設計しています。
全体のデザインは「純わかめ」シリーズとして統一し、売り場での一貫性を高めるとともに、独特の風合いと手触り感を感じさせるトーンにしたことで、素朴さと質の良さを表現しました。
後日談になりますが、「塩蔵わかめ」と「カットわかめ」の発売後、道の駅の売り場で「茎わかめの美味しい食べ方が分からない」という声が上がっていると、中村様からご相談をいただきました。
私たちはすぐさまこのフィードバックを反映し、「茎わかめ」のパッケージ裏面に、塩抜きの方法と、日々の食卓を彩る2つの調理レシピを掲載する仕様へと変更しました。一度納品して終わりにするのではなく、市場の反応を見ながらクライアント様と密にコミュニケーションを取り、ブラッシュアップを続ける体制は、私たちの強みです。
本案件は、別商品のWebサイトや販促用の写真撮影のご依頼から始まったお付き合いでした。丁寧な対応と、クリエイティブの仕上がりに信頼をいただいたことから、パッケージデザインまで任せていただく結果となりました。制作物のクオリティはもちろん、制作過程における柔軟な対応力にも高い評価をいただいた成果だと考えています。